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日本人に増えている自己免疫疾患、多発性硬化症の原因は遺伝・感染?

多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)とは中枢性脱髄疾患のひとつで、脳、脊髄、視神経などに病変が起こります。多様な神経症状を伴いながら、再発(症状の悪化)と寛解(症状の安定)を繰り返す病気です。英語ではこの病気をmultiple sclerosisと呼びますので、この記事中では略してMSと表記します。

多発性硬化症(MS)とは

特定疾患に認定されている指定難病

MSは厚生労働省の指定する特定疾患になっていて、医療費が免除されています。
特定疾患とは、厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の研究対象となっている疾患のことを指します。

2014年に難病の患者に対する医療費等に関する法律、いわゆる難病法が制定され、医療費の公費負担を受ける疾患は特定疾患から指定難病となりました。

中枢神経系の脱髄疾患のひとつ

多発性硬化症 中枢神経系の脱髄疾患のひとつ
出典:nurseful.jp

私たちの神経活動は、神経細胞から出る細い電線のような神経を伝わる電気によって行われています。
一般的な電線が、ショートしないようにビニールのカバーで覆われているのと同様に、私たちの神経も髄鞘(ずいしょう)という被膜で覆われており、その被膜が壊れて神経がむき出しになる病気、それが脱髄疾患と呼ばれるものです。

再発と寛解を繰り返すのが特徴

多発性硬化症 再発と寛解を繰り返すのが特徴
出典:www.kdd1.com

この脱髄が体のあちこちにできて異常を引き起こし、それが再発(症状の悪化)と寛解(症状の安定)を繰り返すのがMSの特徴とされています。
英語のMultipleとは多様な、Sclerosisとは硬化症という意味です。

平均発病年齢は30歳前後

多発性硬化症 平均発病年齢は30歳前後

日本ではMSは稀な病気の一つとされていましたが、この30年で患者は10倍以上に増えており、2万人近いと推定されています。

理由は明らかではありませんが、MSは高緯度地区に多く発生し、人種では欧米の白人に多くみられ、日本の10~20倍の頻度とされています。
この病気は若い人に発症することが多く、平均発症年齢は30歳前後ですが、小児や高齢者での発症もみられます。

発症頻度は女性のほうが高い

男女別でみると女性の罹患率は男性の約3倍となっています。
特に若い女性の場合には就労、結婚、妊娠、出産といった時期に重なることが多く、その後の生活に大きな影響を与える疾患です。
このため長期的なQOL(生活の質)を維持するためにも、早期診断・早期治療が重要です。

世界中では、250万人が多発性硬化症に罹患し、ほとんどの患者は、20歳から50歳までの間に診断されます。
10%未満の症例が、18歳未満で発症しており、女性の方が男性よりも3倍罹患率が高くなります。

引用元: www.jst.go.jp

人にはうつらない

MSの原因は現在のところ不明ですが、感染する病気、遺伝する病気ではありません。
自己免疫反応がこの病気に深くかかわっており、ウイルスやバクテリアによる感染、体質、環境、ストレスなどがMSの活動性に影響すると考えられています。

考えられている発症の原因

自己免疫

MSの原因のもっとも有力なものと考えられているのが、自己免疫疾患説です。
免疫反応とは、体の中に入ってくる異物を排除しようとする自然な働きですが、MSでは何らかの原因で神経組織の一つである髄鞘(ずいしょう)を異物ととらえて攻撃し、神経組織を傷つけているのではないか、と考えられています。

しかし、どのような原因と仕組みでそれが起きるのかについてはまだわかっていません。

遺伝

MSは親から子へ遺伝する病気ではありませんが、北欧や北米では罹患率が高く、日本を含むアジア、アフリカではまれな疾患となっています。
このため、何らかの人種に特徴的な遺伝子の存在が原因として指摘されています。

その一つがHLA遺伝子と呼ばれるもので、HLAは赤血球を除くほとんどの細胞や体液内に存在する免疫機構を形作る遺伝子として知られています。
この遺伝子は親から半分ずつ子に受け継がれるのですが、その中でDR2と呼ばれるHLAタイプを持つ方にMSが多いという調査結果があります。

感染

MSの環境因子の一つとしてEBウイルスへの感染が指摘されています。
EBウイルスは帯状疱疹(たいじょうほうしん)や水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こすヘルペスウイルスの一つで、世界中にみられる感染症のひとつです。

多くの方が一生のうちに感染し、自覚症状がないまま過ごすことも多いのですが、いったん感染すると生涯体内に棲みつづけるとされています。

MSの症状

初期症状は多彩

多発性硬化症 初期症状は多彩

MSは神経の脱髄がどこに起きるかによって症状が様々に変わります。
例えば、目の神経が脱髄することによって、視力が急に落ちる、視野が欠けるなどの症状が起きることがあり、これはMSに比較的よくみられるものです。
最初にあらわれた症状によっては患者さんは眼科を受診したり、整形外科を受診したりすることがあります。

前駆症状として頭痛、発熱、吐き気、構音障害など

MSには前駆症状がない場合が多いのですが、時に頭痛、発熱、風邪のような症状、吐き気などが10%程度に認められます。
また過呼吸や動作時などに急に構音障害や失調症を起こしたり、手足のしびれや痒みなど突発性発作が現れたりすることがあります。

めまいを感じたら要注意

めまいには大きく分けて2つ、自分の周囲のものがぐるぐる回る回転性のものと、立ちくらみのような急に目の前が暗くなる非回転性のものがあります。

このうち回転性のめまいの原因の一つとして自律神経失調症、聴神経腫瘍、髄膜炎などとともに、多発性硬化症が挙げられる場合がありますが、めまいがMSに特徴的な症状であるとはいえません。

疲労はよくみられる症状

疲労はMSによくみられる症状で、大きく分けて2種類あります。
一つは持続する疲労で、簡単な作業やただ体を動かすだけでも難しくなる場合があります。

もう一つは体を動かした後に突然襲われる疲労感で、例えば歩行中に突然疲労を感じて動けなくなってしまう、ということが起こります。

疼痛などの痛み

MSは疼痛(とうつう)を伴わない疾患と考えられていましたが、近年では疾患の経過中に著しい疼痛、不快感を経験する場合があるとわかってきました。
MSの疼痛は、筋肉や骨格の疼痛、発作性の疼痛、慢性的な疼痛の3種類に分類されています。

レルミット徴候

発作性の疼痛のなかの一つに、頚髄(けいずい:首の骨の中の脊髄部分)が障害された場合には、首を曲げると背中から足にかけて感電したようなしびれ感が走ることがあり、これを「レルミット徴候」といいます。

視神経炎

中心暗点のイメージ

中心暗点のイメージ

視力障害はMSによくみられる症状です。
その中で視神経に対する障害(炎症)は視神経炎と呼ばれ、一時的な視力低下などの症状を引き起こします。
ときには眼の奥の痛みを伴うこともあります。

一般的には数週間で視力が回復し、まったく見えなくなるということはまれです。
この症状は片側の目だけに起きて、再発を繰り返すケースが多いとされています。

症状が進行すると眼鏡で矯正できないかすみ目となったり、色覚を失ったりすることもあります。
また、中心暗点と呼ばれる視野の中央に暗い部分ができる症状が起きることもあります。

目を動かす神経がマヒする

眼球を動かす神経にマヒ症状が出ると、外眼筋(がいがんきん:眼球の向きを変える筋肉の総称)の働きが悪くなり、両目の視線がずれてきたときに起こる複視と呼ばれる症状が出ます。
運転や読書のときに一方の眼に眼帯をつけると、この症状は治まります。
また、特殊なレンズを備えた複視用のメガネも販売されています。

横断性脊髄炎

横断性脊髄炎(おうだんせいせきずいえん)とは、脊髄の特定の場所に横方向に炎症が起きることによって発生する神経の障害です。
炎症の箇所によって症状は変わり、背中が突然痛くなったり、足のしびれが起きたりします。

かつて日本では、重い視力低下と下半身マヒ(横断性脊髄炎)を繰り返すMSを「視神経脊髄型多発性硬化症」と分類していましたが、現在ではこの病気はある抗体の発現を原因とする別の疾患「視神経脊髄炎(NMO)」と考えられています。

四肢の筋力低下

MSで筋肉に信号を伝える神経線維に脱髄が起きると、運動障害が現れ、四肢の筋力低下を起こし、手足に力が入りにくくなります。
この症状が進行すると、歩くと膝が笑うようにガクガクふるえる症状などが起きることがあります。

末期には認知症や躁症状に至ることも

MSの末期になると、認知症や躁(そう)症状(過剰な興奮状態)がみられる場合もあります。
排尿や排便を制御している神経が侵されることもあり、その場合は頻尿、強い尿意、尿閉(尿がぼうこう内に充満しているのに排尿できない状態)、便秘などがみられ、ときに尿失禁や便失禁も起こります。
再発の頻度が高いと機能障害が重くなりますので、再発を抑えることが重要です。

MSのガイドライン

多発性硬化症 MSのガイドライン
出典:www.amazon.co.jp

ガイドラインとは、ある病気をどの病院でもどの医師が診ても、統一的かつ標準的な治療が行えるように、治療指針を定めたものです。
MSにおいては、2010年に厚生労働省免疫性神経疾患調査研究班の班長であった九州大学神経内科教授を委員長として詳細な検討が行われ、日本神経学会、日本神経免疫学会、日本神経治療学会の3学会合同により策定されたガイドラインがあります。

MSの臨床分類

多発性硬化症 MSの臨床分類
出典:byoinnavi.jp

MSは再発(症状の悪化)と寛解(症状の安定)が交互に起きる再発寛解型が特徴とされています。
寛解期間は数ヵ月~数年続き、再発は自然に起きる場合もありますが、インフルエンザなどの感染症が引き金になる場合もあります。

MSのタイプは次のように分類されています。

再発寛解型MS relapsing remitting MS:RRMS

再発して症状が悪化したのちに、寛解・安定期が現れる、ということを繰り返します。

一次性進行型 primary progressive MS:PPMS

病状が進行しない一時的な安定期間もみられるものの、寛解や明らかな再発はなく、徐々に病状が進行します。

二次性進行型 secondary progressive MS:SPMS

最初のうちは再発と寛解を繰り返しますが、しばらくすると緩やかに進行が続くようになります。

進行再発型 progressive relapsing MS:PRMS

病状は徐々に進行しますが、その過程で突然の再発もみられるタイプです。
このパターンはまれです。

MSの診断基準

日本では厚生労働省が提唱する診断基準があり、医療費助成の認定基準にもなっています。
現在、「2011年改訂国際診断基準」に沿った改訂作業が進行しており、MSの病変の特徴を考慮した基準が定められています。

主な項目は次の3つです。

1)中枢神経系内の2つ以上の病巣に由来する症状があること(空間的多発性)
2)症状の寛解や再発があること(時間的多発性)
3)他の疾患による神経症状ではないことが明らかであること

内科では「異常なし」と診断されることも

MSはどの神経が侵されるかによって神経症状が不規則に変わります。
このため、診断は決して容易ではありません。
患者さんは最初に現れた症状次第では、内科や眼科を訪れることもありますが、そうした非専門医でMSの確定診断をすることは難しく、専門の神経内科医の受診が必須となります。

MRI検査による画像所見の一例

MRI検査はMSの発見と診断に最も役立つ画像検査法で、これにより脳と脊髄の脱髄が起きた箇所の特定ができます。
MRIは撮り方によって病変の見え方や意味合いが異なります。

T1強調画像とT2強調画像

多発性硬化症 T1強調画像とT2強調画像

MRI検査で得られる画像の一種であるT1強調画像、T2強調画像で観察すると、MSの病巣は水分が多いためT1強調画像にて黒く映ります。
一方、T2強調画像では白く映ります。
医師は、これらの画像と他のデータを参考にMSの診断を行います。

造影剤による検査

ガドリニウムという造影剤を血管内に注入してMRIを行うと、脱髄が起きたばかりで活発な炎症がみられる部位と、脱髄が起きてから時間が経過した部位とを識別できます。

ADC値の測定

MRI検査の拡散強調画像(DWI)は水分子の自己拡散(ブラウン運動)を画像化したもので、それを定量化したものがADC-mapといいます。
MSの脱髄巣は、しばしば拡散強調画像DWIで高信号を示し、ADC値の測定では正常の白質に比べ上昇します。
さらに、急性の脱髄巣はADC値が低下し、病期により変化する組織変化を反映すると考えられています。

髄液検査

MSでは脳や脊髄の病変部位に炎症があり、脳脊髄液に炎症反応があるかどうかをみるため、髄液検査(ずいえきけんさ)を行います。
この検査は腰の部分に針を刺して脳脊髄液を採取して調べます。

急性期のMSでは髄液に、たんぱく質の増加、免疫グロブリンIgGの上昇、オリゴクローナルIgGバンドの出現など、炎症や免疫反応が強すぎることを示す所見が現れます。

神経生理検査

手や足のしびれ、力が入らない、うまく歩けない、細かい動作が困難、などの自覚症状の種類や部位、程度を数値や波形により具現化し、診断に役立つデータとして提供する検査です。
MSをはじめとした多くの疾患の診断と評価に利用されています。

病院での治療

MSの治療は急性期にはステロイドによるパルス療法を行い、維持療法としてS1P1受容体調節薬、インターフェロンβ製剤による治療を行うのが一般的です。

ステロイド治療

MSの急性期には大量のステロイド薬を火消し役として用います。
注射薬による短期大量間欠療法(パルス療法)により劇的な効果が期待できます。
その後、飲み薬などに切り替え徐々に減量するなどします。
急性期症状の改善が期待できますが、長期的な維持療法には向いていません。

S1P1受容体調節薬

多発性硬化症 S1P1受容体調節薬
出典:www.karacure.com

(医療関係者向け製品名:ジレニア、イムセラなど)

これらはMSの再発予防薬であり、自己反応性リンパ球による攻撃から、脳や脊髄の神経細胞(髄鞘)を守り、炎症をくい止めます。
これにより、多発性硬化症の再発を減らし、病気の進行を抑える効果が期待できます。

副作用として、初回服薬時の徐脈(脈が遅くなること)や、感染症、黄斑浮腫(おうはんふしゅ)などがあります。

インターフェロン(注射)

多発性硬化症 インターフェロン(注射)

(医療関係者向け製品名:ベタフェロン、アボネックスなど)

インターフェロンβ製剤は、MSの再発予防に標準的に用いられており、病気の活動を抑え、再発回数を減らしたり、症状を軽減したりするなどの効果が期待できます。

ベタフェロンは、皮下注射薬で1日おきの自己注射が可能です。
アボネックスは、週一回、筋肉内注射をします。
これらの薬にはいろいろな副作用があり、発熱や頭痛、筋肉痛などインフルエンザのような症状、注射部位が赤くなったり固くなったりする、吐き気、不眠、うつ状態などが起きることがあります。

免疫抑制薬

(医療関係者向け製品名:エンドキサン、イムラン、アザニン、ノバントロンなど)

MSは一種の自己免疫疾患と考えられており、免疫調整作用を期待していくつかの免疫抑制薬が使われることがあります。
第一選択とされることは少ないですが、インターフェロンが副作用で使用できない場合、効果不十分な場合などに応用されることがあります。
感染症に十分注意するなど慎重に用いる必要があり、保険適応外となります。

急性期後はリハビリが行われる

MSにリハビリを行うことはとても大切で、適度に行うことによって症状の緩和が期待できます。
その内容は、寝返り動作訓練、起き上がり、車いすへの乗り移りなどの移動・移乗動作訓練、立ち上がり・歩行訓練などです。
低下した筋肉の強化や障害部位への筋力とレニーニングも行われます。
これらは機能低下の予防のためにも重要なものとなります。

※リハビリを行う際の注意点

MSでは一時的な疲労感に襲われたり、体温や気温の上昇で症状が一時的に悪化したりすることがあります。
そのような場合は無理な運動は控え、週に2-3回程度の頻度で行うようにしてください。
途中で体調が悪くなったり、集中力の低下がみられたりする場合は、休憩をはさんでクールダウンするようにしましょう。

日常生活でできる対処法

過労やストレス、感染症は再発の危険因子

MSの対処法として有効なのは、再発・悪化の原因となるストレスや疲労をためないこと。
特に精神的なストレスは、免疫力の低下につながりますので注意しましょう。
ストレスや疲労をためないためには、毎日十分な睡眠をとる、趣味などでストレスを発散させる、よく笑うようにする、翌日に疲れを残すような運動はしない、疲れたらきちんと休養する、などが有効です。

また、感染症はMSの進行・悪化の危険因子ですので、うがいや手洗いなどを行う習慣を身につけて、感染症を防ぎましょう。

適度な運動を推奨

適度な運動を行い免疫力を高めることで、感染症や疲労に負けない体を手に入れることができます。
体を動かすことは、身体機能の低下防止と維持にも有効です。
ただし、過度な運動は再発・悪化の原因ともなりますので、やりすぎには注意が必要です。

適度な運動の例としては、ストレッチ、ヨガ、ウォーキング、水泳、サイクリングなどが推奨されています。

最終更新日: 2017-04-16

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多発性硬化症

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