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妊娠糖尿病の診断基準となる血糖値とは?改定後の診断基準は?

妊娠中に血糖値が一定以上の数値になってしまう妊娠糖尿病。我が国では2010年に妊娠糖尿病の診断の目安となる血糖値について改定が行われました。現在の診断基準と以前の診断基準の違い、改定の目的について解説します。

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妊娠糖尿病の診断基準の変更について

妊娠糖尿病 妊娠糖尿病の診断基準の変更について

ちなみに、糖尿病診断のための血糖値検査は10時間以上絶食したあとを空腹時としています。

そのあとブドウ糖液を飲み、1時間後と2時間後に採血を行います。
これが負荷1時間後、負荷2時間後の血糖値です。

変更前(2010年まで)の診断基準

2010年以前の妊娠糖尿病診断基準として、妊娠初期と中期に全妊婦を対象に75gブドウ糖負荷検査(OGTT)によって血液中のグルコース濃度によって判断されていました。

・妊娠糖尿病(日本産婦人科学会1995)
 空腹時:100mg/dl以上
 負荷1時間後:180mg/dl以上
 負荷2時間後:150mg/dl以上

以上2項目該当によりGDM(妊娠糖尿病)と判断されます。

変更後(2010年)の診断基準

2010年には日本糖尿病・妊娠学会より妊娠糖尿病診断基準が以下のように改定されました。

 空腹時:92mg/dl以上
 負荷1時間後:180mg/dl以上
 負荷2時間後:153mg/dl以上

以上1つでも該当すれば、妊娠糖尿病と診断されます。

 

上記のように、妊娠糖尿病の診断基準は少し厳しめに設定されました。そのため、妊娠糖尿病と診断される妊婦さんは以前に比べて増加しています。

そしてもう1つ、「1つでも該当すれば妊娠糖尿病と診断される」ことも重要な点です。

要するに、空腹時(早朝のご飯を食べる前の状態)の血糖値さえ診断基準を満たしていれば、妊娠糖尿病と診断できます。

そのため、その妊婦さんには上記の75gブドウ糖負荷検査を行う必要はなくなったのです。
もう診断がついているのに、血糖が高めの妊婦さんにわざわざブドウ糖を投与して検査する75gブドウ糖負荷検査は母体にも胎児にも良くありません。

このような2つの変化があることから、2010年の診断基準の変更は大きなものであったといえるでしょう。

ヨクナル提携医師・医学生: 筑波大学医学群医学類卒

先天異常、巨大児分娩のリスクを下げるため変更に

妊娠糖尿病 先天異常、巨大児分娩のリスクを下げるため変更に

以前まで妊娠糖尿病は妊娠前に発症した糖尿病、つまり糖尿病合併妊娠も含まれていました。

2010年の診断基準変更では、妊娠前に発症した糖尿病は妊娠糖尿病から除外され、「妊娠糖尿病は妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至らない糖代謝異常」としました。

更に空腹時の血糖値を100mg/dl以上から92mg/dl以上に改め、3つある条件の内1つ以上が当てはまれば妊娠糖尿病とすることになりました。

これによって今まで見逃しがちであった軽い糖代謝異常のある妊婦に対しても、妊娠糖尿病によって起こるとされる先天異常、巨大児分娩のリスクを下げるため治療が行われるようになったのです。

 

妊娠糖尿病は一般的な糖尿病に比べて診断基準が厳しいですが、どうして普通の糖尿病より厳しい「妊娠糖尿病」という疾患を設けたのでしょうか。

簡単に言ってしまえば、赤ちゃんへの影響をできる限り未然に防ぐためです。
糖分(グルコース)は胎児の成長に欠かせないエネルギーです。
そのため、妊婦さんは胎盤から分泌されるホルモンによって、自分の体にグルコースを吸収させず、赤ちゃんに優先的にグルコースを回してあげる仕組みを作っています。
そのため、妊婦さんは血糖値が妊娠前より上がりやすくなっています。

この血糖値が高くなることでの「赤ちゃんへの影響」には次のものがあります。

①巨大児
お母さんから多量のグルコースが送られてくるため、赤ちゃんの育つエネルギーが過剰になり、巨大児になります。
そのため自然分娩が難しくなり、難産となることがあります。

②新生児低血糖
こちらも、お母さんから胎児に多量のグルコースが送られてくるため、胎児の方で血中のグルコースを下げるホルモン(インスリン)の分泌が過剰になります。
これが生まれた後も続くことになるので、お母さんからグルコースが送られてくるわけではないのに、血糖を下げるインスリンが過剰に分泌される状態になります。
そのため、赤ちゃんに低血糖が起こりやすくなります。

低血糖は、脳などに不可逆な障害をもたらすなど非常に危険な状態で、血糖値をきちんと維持する必要があります。

また、妊婦さんでは妊娠前より血糖が上がりやすいことをご説明いたしました。
これも母体から胎児への影響を与えることになります。具体的にご説明いたします。

①血糖が高い状態は、血管に障害をもたらしやすい状態です。
そのため、胎児に血液を起こる血管に障害が起こることで、胎児の発育遅延や早産、最悪の場合流産の可能性もあります。

また、母体にとっても高血糖の状態は当然良いとは言えず、妊娠高血圧症候群などの病態をもたらします。

②胎児の器官が形成される時期(特に妊娠5~8週くらい)では、高血糖が胎児の細胞の分化に悪影響をおよぼすといわれています。
そのため、赤ちゃんに奇形などが生じてしまうことがあります。

このように、妊娠中の高血糖は赤ちゃんに様々な悪影響を及ぼします。
また、妊娠糖尿病と診断された妊婦さんは、将来糖尿病になる確率が高いともいわれています。

これらの理由から、妊娠中は厳格な血糖のコントロールが必要となります。

ちなみに妊娠中の血糖のコントロールは、経口の血糖降下薬では胎児への悪影響が否定しきれていないため、食事療法だけでコントロールできない場合には基本的にインスリン注射となります。

ヨクナル提携医師・医学生: 筑波大学医学群医学類卒

糖尿病合併妊娠の診断基準(1999日本糖尿病学会)

75gブドウ糖負荷検査にて空腹時の数字が140mg/dl以上、負荷2時間後の数字が200mg/dl以上どちらかの条件を満たせば、糖尿病合併妊娠とされていました。

妊娠糖尿病との切り分けは、妊娠初期から家族に糖尿病患者がいるかどうか、肥満の有無、年齢や随時血糖値測定などによってスクリーニングが行われます。

2015年より各学会と統一した診断基準へ

妊娠糖尿病 2015年より各学会と統一した診断基準へ
出典:www.dm-town.com

妊娠糖尿病を含む妊娠中の糖代謝異常の診断基準や妊娠前に発覚した糖代謝異常、糖尿病合併妊娠の位置づけについて、日本産婦人科学会と日本糖尿病学会、日本糖尿病・妊娠学会の三学会は最後のすり合わせを行い、統一した診断基準を発表しました。

2)妊娠中の明らかな糖尿病 overt diabetes in pregnancy (註1)
以下のいずれかを満たした場合に診断する。

空腹時血糖値 ≧126 mg/dl
HbA1c値 ≧6.5%
*随時血糖値≧200 mg/dlあるいは75gOGTTで2時間値≧200 mg/dlの場合は、妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭に置き、1または2の基準を満たすかどうか確認する。
(註2)

3)糖尿病合併妊娠 pregestational diabetes mellitus
妊娠前にすでに診断されている糖尿病
確実な糖尿病網膜症があるもの

註1.妊娠中の明らかな糖尿病には、妊娠前に見逃されていた糖尿病と、妊娠中の糖代謝の変化の影響を受けた糖代謝異常、および妊娠中に発症した1型糖尿病が含まれる。
いずれも分娩後は診断の再確認が必要である。

註2.妊娠中、特に妊娠後期は妊娠による生理的なインスリン抵抗性の増大を反映して糖負荷後血糖値は非妊時よりも高値を示す。
そのため、随時血糖値や75gOGTT負荷後血糖値は非妊時の糖尿病診断基準をそのまま当てはめることはできない。

引用元: www.dm-net.co.jp
妊娠糖尿病 2015年より各学会と統一した診断基準へ

これは国際的な研究グループ「IADPSG」(International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups)が2010年に作成した世界統一の妊娠糖尿病(GDM)診断基準です。

以前の診断基準より条件が厳しくなったので、軽度の高血糖でも妊娠糖尿病と診断されるようになりました。
これにより妊娠糖尿病患者数は3〜4倍に増加するとも言われています。

早期にハイリスク予備軍を発見することができるようになり、将来の糖尿病人口の増加を抑止することが可能になると考えられます。

最終更新日: 2016-11-06

タグ:
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